完全自動運転車両の技術開発およびその社会実装に向けた研究を実施し、地域・産業界に貢献

スローモビリティプロジェクト

低速モビリティ部門

1. 低速モビリティとは2. 低速モビリティ部門について3. 産学官民の協働で開発した低速電動バス4. 関連シンポジウムのご案内

1. 低速モビリティとは

 近年、様々な次世代モビリティ(ニューモビリティ)が研究開発されています。その中で低速(走行速度が従来の自動車よりも遅い)の自動車を「低速モビリティ」または、「スローモビリティ」と呼んでいます。自転車、シニアカー、一人乗りのパーソナルモビリティで速度があまり早くないものなどがこれにあたります。また、遊園地や公園などで見かける馬車なども含まれるでしょう。

 従来の概念で言えば、できるだけ多くの人をできるだけ早く目的地に運ぶことが、モビリティに与えられた使命でしたが、それとはまったく新しい価値観で、移動手段を提供しようとするものが、低速モビリティです。

 群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センターでは、このような低速モビリティが、地域や社会にどのような効果をもたらしてゆくか、あるいはそれにかかわる技術はどのようなものがあるかを研究する部門として、低速モビリティ部門を設置いたしました。

低速電動バスを用いた産学官民連携による地域活性化の取り組み

2. 低速モビリティ部門について

 低速モビリティ部門では低速モビリティに関する技術開発と、その地域実装に関する様々な社会的効果、受容性、導入に向けた仕組みづくりなどを研究します。

低速モビリティに関する研究課題

低速モビリティ部門ではこんな課題に取り組みます

  1. 低速モビリティに関わる運行ノウハウの蓄積・データベース化
    低速モビリティ部門では、低速モビリティの社会実装に必要な運行ノウハウを実証試験を通して蓄積し、低速モビリティを運行しようとしている自治体等に提供してゆきます。
  2. 低速モビリティに関わる情報共有の場の提供
    全国の自治体や運行主体などを対象とした、低速モビリティのシンポジウムや講習会を企画して情報共有の場を提供します。
  3. 低速モビリティの社会的受容性の研究
    低速モビリティと、在来交通との共存性、安全性などを研究します。また、地域の運行事業者の育成や、地域での実装に必要な社会的受容性を研究します。そのために必要な、地域のモビリティ教育や地域特性の把握、経済的に自立可能な運行モデルの構築なども研究テーマとします。
  4. 高齢者の暮らしの足の確保と地域の見守り・健康増進
    現在高齢者の多い地域の公共交通(暮らしの足)をいかに確保するかが、全国的に大きな課題となっています。低速モビリティが地域コミュニティの活性化にも寄与できることもわかってきました。このような視点での公共交通の研究は今まで行われておらず、社会科学的な分析が重要です。
  5. 新しい低速モビリティ開発
    地域のニーズに合った新しい低速モビリティの研究開発を行います。
  6. 低速モビリティの地域導入を支える関連技術
    低速モビリティを地域に導入する場合に必要な様々な関連技術を研究開発します。

群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センターが所有する
自動運転化された低速電動バスeCOM-10

3. 産学官民の協働で開発した低速電動バス

 群馬大学は北関東産官学研究会と共に2010年にJST社会技術研究開発センター(RISTEX)の「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」のプロジェクトの一つとして、「地域力による脱温暖化と未来の街-桐生の構築」を採択しました。このプロジェクトの中で、低速電動バスの概念が構築され、2013年に実際に低速電動バスを開発しました。

 この開発には、群馬大学次世代EV研究会に参加している多くの企業がかかわりました。特に、㈱シンクトゥギャザーを中心として、基本的な設計が進められ、群馬県内外の企業27社の協力のもとで2台の低速電動バスが生まれました。そのうちの1台は桐生市に、もう一台が富山県黒部市に納車されました。

 2015年からは、このプロジェクトが、同じJST社会技術研究開発センターの「研究開発成果実装支援プログラム【成果統合型】」に受け継がれ、その中で3年間にわたり低速電動バスの運行に関する研究も継続することができました。このプロジェクトは、まさにそれまでのプロジェクト成果を社会実装することを目的としたものでした。特に、桐生市や地域の市民の皆様の協力を得て、低速電動バスの様々な実証試験を行うことができました。

 また、同時に桐生市が「総務省・地域経済循環創造事業」に採択され、㈱桐生再生が新しく3台の低速電動バスを導入して、本格的な地域内での運行を行うようになりました。これは、低速電動バスの本格的な社会実装例であり、現在も国内外から多くの視察が行われています。

低速電動バスの特徴

低速電動バス(eCOM-8)の特徴は、以下のようなものです。現在は新型の低速電動バス(eCOM-82)が開発され、桐生市で運行が始まっています。

  • 低速(時速19km)なので周囲がよく見える
  • 低騒音・対面式ベンチなので車内の会話が弾む
  • 電動バスなので低CO2排出量、乗せ換え電池搭載
  • 再生可能エネルギーと相性がいい
  • 開放的な設計で周囲との一体感が高い

載せ換え可能電池

自然に会話が進む対面式シート

低速電動バスの活用事例と効果

■観光地や商店街の良さを引き出す

低速電動バスはゆっくり走るため、まわりの様子をよく見ることができます。特に側面の窓ガラスもありませんので、周囲との一体感も感じられます。観光地や商店街での運航に最適です。


公園やテーマパークでの運行
前橋市の群馬フラワーパークでの運行の様子です。

観光地での運行
尾瀬の下山路での運行試験では、お客様から「まだ山の中を歩いているみたい」と喜んでいただきました。

観光地での運行
みなかみ町では、谷川岳一の倉沢の観光ルートに利用されています。

観光地での運行
宇奈月温泉でも活用されています。

商店街での運行
世界遺産「富岡製糸場」へ向かう商店街のルートでも利用されています。

暮らしの足として

路線バスが無いお年よりの方が多く住む地域で、低速電動バスを定期運行する実証試験を行いました。その結果、地域コミュニティの活性化につながるような事例がみられました。

子供たちの教育に

子供たちの環境教育にも低速電動バスは利用できます。桐生市では高校生が子供たちに低速電動バスについて講義をする取り組みが行われています。

自然エネルギーとの相性も抜群

低速電動バスは、比較的少ない電力での走行が可能なため、太陽光エネルギーや小推力発電電量でも走行が可能です。

宇奈月温泉にある小水力発電設備です。小さな発電機の電力で低速電動バスを動かす実験が行われました。

健康・福祉としての利用

お年寄りや体の不自由な方にも、まちなか観光を楽しんでいただくことができます。

未来創製塾の「サンタがMAYUでやってくる」
(子供たちがお年寄りの施設を訪問するイベントです)
eCOM-82とeCOM-10は、車いすリフター付です。

地域イベントでの活用

地域のお祭りやイベントでも活用されています。

きりゅうまつり「ジャンボパレード」

4. 関連シンポジウムのご案内

W-BRIDGEシンポジウム「スローモビリティがつくる元気で健康な地域コミュニティ」

日 時:2019年6月5日(水)13:30~17:00
場 所:早稲田大学, 早稲田大学,早稲田キャンパス 10号館 109教室(バス展示:会場前)
    〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1丁目6-1
参加費:無料

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